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2021年度同朋大学入学式式辞

 

 同朋大学2021年度入学式にご出席のすべての皆さま、ご入学おめでとうございます。満開の桜の花のもと、COVID-19、コロナの中、屋外で入学式を行うこととしました。皆様をこれまで育てていただいたご家族の方を含め保護者の方は、ご出席をご遠慮いただきました。

 先ほど、入学を認定いたしましたが、文学部101人、社会福祉学部209人、大学院人間学研究科10人、別科(仏教専修)22人の計342人の方が入学されました。学部生の多くの方は若い方々です。と同時に学部にも、大学院や別科にはご年配の方も入学されています。また、障害をお持ちの方のご入学もあります。多様性に富む方々からなる大学が同朋大学です。

私立大学は、それぞれ建学の理念に基づいて成り立っている大学ですが、同朋大学の建学の理念は、「共なるいのちを生きる」。少し難しく言うと、「同朋和敬(どうぼうわきょう)」、「同朋」は、浄土真宗の宗祖(しゅうそ)の親鸞聖人がともに教えを聞く仲間を「御同朋、御同行」と呼んだことにより、また、その親鸞聖人が日本仏教を開いた方として尊敬した聖徳太子の「和をもって貴し」「篤く三宝を敬え」の「和」と「敬」の精神をいただき、「同朋和敬」としています。この建学の理念のもと、本学では、皆様お一人お一人を、人格を持った個人として尊重し、その学びを保障していきます。

 さて、これから三つのことを述べたいと思います。まず、一番目です。

 日本国憲法13条には、「すべて国民は、個人として尊重される」とあります。「個人=individual」は、明治になって出てきた概念で、1870年台後半から使われだしたそうですが、それぞれ個性を持った人間のことで、社会集団に対するその構成者を言います。個性はそれぞれ多様性を持っています。その多様性を持つがゆえに尊重されるということです。今から91年前の3月に26歳の若さで亡くなった童謡詩人金子みすゞの詩「私と小鳥と鈴と」、これは小学校の教科書で学んだ方も見えると思います。

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速く走れない。

私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

この最後のフレーズ「みんなちがってみんないい」は、「共に歩み、共に学び、共に育つ」に通じるものだと私は考えています。皆さんが、一人ひとりの持っている個性をさらに伸ばし、この大学で大きく成長させてくれることを期待します。日本では今、選択的夫婦別姓を求める人たち、ジェンダー平等を求める人たち、性的マイノリティLGBTQと呼ばれる人たち、がそれぞれの形で運動を進められており、こうした多様性を認め合う社会に代わってほしいと私は思います。この、多様性ある社会は、個人の尊重と密接に関連していることを自覚して、同朋大学での学生生活を送っていただきたい。これが一点目です。

 二番目は、懐疑主義のすすめです。懐疑とは簡単に言うと、物事を疑うということです。そう言うと、人の言うことを信用しないのか、と言われそうですが、I.F.ストーン、アメリカのジャーナリストですが、彼は「すべての政府は嘘をつく」の信念で調査報道をフリーの記者として行い、個人新聞を発行して社会に訴えました。懐疑、つまり物事を疑うということは「問い」を持つということです。どうやって「問い」を持つのか。「問う」ことを「学ぶ」ことを「学問」と言います。皆様は、これまでの生活の中で多くの方が、小・中・高を通じて、周りの意見に従うことがなにかと「メリット」が多いことを感じてきたかもしれません。でも、一度「だが、しかし本当だろうか」と考えてみてください。分かり易く言うと、「なぜ、どうして」という疑問の問いかけを習慣化することです。このことが、科学や技術を発展させてきたのです。人間にとって当たり前という感覚をアインシュタインは疑いました。時間は絶対であるということに疑いを持つことから特殊相対性理論が生まれ、空間は一様だとうことを疑うことから重力により空間が歪む、一般相対論を見出しました。これは、実験によっても後に証明されました。すべて、最初は、少数の意見、あるいは誰もが考えつかないことを疑うことから始まりました。そして、これが最終的には真実になることが、当たり前に起きています。何よりも、自分で確かめることが必要です。このことを大事にして、学生生活を送ってください。

 最後に、三点目。同朋大学での学びについてです。まず1年生の時に、皆さんはそれぞれの学科や専攻の先生の基礎ゼミを受けることになっています。その担当の先生が、皆さんの生活全般を含めて相談に乗ってくれます。学修の仕方を十分身に付けていない人もいるでしょうし、スポーツに高校時代のすべてを注いできた人もいるでしょう。でも、大学は所定の単位を取らないと卒業できません。私たちは、あなた方の学びを助けるために、最大限の努力をします。ゼミ担当の先生に遠慮しないで尋ねてください。オフィスアワーには、研究室で先生方が皆さんをお待ちしています。また、履修単位や資格課程の単位など分からないことは事務部の職員にも、お尋ねください。また、COVID-19、コロナの中で、経済的に困っている方もお見えだと思います。大学では、文部科学省による支援や、また本学独自の支援も行っていますので、事態が悪化する前に、遠慮なくお尋ねください。本学では、学生相談室や健康管理室、障害学生支援室など、その道の専門家が皆様の心身や学びに関する相談に応じる仕組みを作っています。こうした大学の仕組みを有効に使ってください。

 一つは「多様性の尊重」、二つは「懐疑主義の重要性」、三つ目は「同朋大学での学び」です。これら三つの点についてお話ししましたが、COVID-19、コロナの中で、同朋大学は、最大限対面授業を重視していきたいと考えています。しかし、やむを得ず遠隔授業にせざるを得ない事態も起こりえることも覚悟しておかなくてはなりません。先のことは見通せませんが、学生の皆さんへのさまざまなお知らせは、「DOHOポータル」というwebシステムでお知らせしていきますので、一日に一回は何をさておいても「DOHOポータル」へのアクセスは習慣化してください。

最後になりますが、新入生の皆様には何よりも自分を大事にすると同じく他者を思いやる気持ちをお持ちいただき、学修に、クラブ活動に、友達つくりなどに精進いただき、これからの同朋大学での生活が充実したものとなることを期待し、私のメッセージといたします。同朋大学へのご入学、本当におめでとうございます。

2021年4月2日

同朋大学学長 松田 正久