学長メッセージ

 同朋大学は、文学部と社会福祉学部の2学部と別科(仏教専修)、そして大学院からなる小さな大学です。歴史を遡れば1921年、真宗大谷派名古屋別院(東別院)の境内に設けられた「真宗専門学校」が始まりで、その名のとおり、親鸞聖人のいただいた浄土真宗の教えを学ぶ道場でした。

 親鸞は平安末期から鎌倉期を生きた仏教者です。貴族だけが救われるのではない、身分や貧富の差に関係なく、人は人として等しく救われなければならない。仏教を広く民衆に解放する道を自ら拓きながら、同じ思いで歩みを共にした人々を、親鸞は「弟子」ではなく「御同朋・御同行」<おんどうぼう・おんどうぎょう>と見ておられました。私たちはそれを現代の人にも分かりやすく「共なるいのちを生きる」(Living Together in Diversity)とも表現しています。

 大学などの高等教育機関はどれも、新しい社会リーダーを創造する、という使命を担っています。ただし、同朋大学が描く未来のリーダー像は、今日、政治やメディアの世界ではしばしば見かけるような、他者を攻撃し、論破して、自らの優位を誇示する指導者ではありません。マウントの取り合いはしょせん、憎しみと不和しかもたらさないと理解し、組織のトップに立って人々を動かすよりも、人々のなかに飛び込み、多くの仲間と連帯し、一緒になって状況を動かす——そういうリーダーシップが、これからは必要とされます。「共なるいのちを生きる」精神をはぐくみ、差別・貧困・闘争に満ちた社会からの救いをめざす、学びの道場が同朋大学です。

 人間は社会的な生きもので、社会は人間によって構成されています。人間とは何か、人間の作り出した文化とは何かを問う「文学部」の学びも、この社会により良い公共空間を創造するにはどうすべきかを学ぶ「社会福祉学部」の学びも、根底ではつながっています。そのつながっている中に、文学、歴史、言語、思想、宗教、あるいは福祉、医療、保健、援助、行政、情報、教育、心理など、「人間と社会」への様々な学びの入り口があり、すべてこのキャンパスに用意されています。小さな手作りの学舎で、いささか見栄えには欠けますが、中身はぎっしり詰まっています。そして学生のみなさんが、様々なツールを利用して、知性と技術と実践力、ひとことで言えば人間力を磨いています。これを読んでくださっているあなたも、やがてその仲間になってくれることを期待しています。

fukuda

同朋大学 学長

福田 琢(ふくだ たくみ)


-PROFILE-
埼玉県出身。専門は仏教学(インド仏教)。ブッダの思想を原点としてアジアに広く展開した仏教の智慧と実践を、文献学の手法を通して明らかにしてゆくことが課題です。普段の生活はインドア派ですが、外を歩き回ることは嫌いではありません。