同朋大学 学長 松田 正久

2018年度 同朋大学卒業証書・学位記 修了証書授与式 式辞

 寒い冬も終わりを告げ、今日の卒業・修了式は好天となり、桜の蕾も膨らみ、皆さんの卒業・修了をお祝いしているかのようです。2018年度の卒業・修了式にあたり文学部仏教学科12名、人文学科36名、社会福祉学部社会福祉学科社会福祉専攻88名、子ども学専攻49名の総計185名の学部卒業生の皆さん、人間福祉研究科人間福祉専攻の2名、臨床心理学専攻7名の計9名の大学院修了生の皆さん、別科(仏教専修)の29名の併せて223名のすべての皆さん、この卒業・修了式にあたり同朋大学を代表し、これまで一生懸命取り組んでこられた皆さんの努力と自己研鑽に対し、衷心よりお祝いいたしたく存じます。また、今日の式典にご出席のご家族の皆様に対し、長きにわたり学部での学修や大学院での研究を支えていただいたご努力に深く敬意を表し、お祝い申し上げます。

 今日は、同窓会長佐藤賢俊(けんしゅん)様、同朋学園甲村理事長をはじめとする学園理事・評議員の方々、同朋学園各機関の関係者の方々など多くの来賓の方々にご臨席をいただいております。高い席からではありますが改めてお礼を申し上げたいと思います。

 同朋大学の淵源をたどれば、1921年の真宗専門学校に行きますが、同朋大学は、「同朋和敬(どうぼうわきょう)」を建学の精神として、第二次大戦後の混乱期にあって、1950年四年制の仏教学部1学部からなる東海同朋大学として開学し、1959年同朋大学と改称し、今日に至っています。その歴史は、68年の長きに及んでいます。今年度の卒業生の多くの皆様は、今から4年前の2015年4月に同朋大学に入学された皆様です。入学生は220人でした。この中には、やむを得ず大学を辞めざるを得なかった方、何らかの事情で卒業延期となった方々もお見えです。その方々の思いを共有しながら、皆様はこの卒業式に臨まれていることを是非自覚していただきたいと思います。この思いも「他者への思いやり」に通じると思うからです。

 「共なるいのちを生きる」とは、2011年3月11日の東北大震災をはじめ、熊本地震や引き続く大水害で多くの方々が被災された方々への思いをはせることだと思います。異常気象が異常でなくなる時代に地球全体が入っている、その背後には地球温暖化の影響があり、今スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんの行動に刺激され、たくさんの若者が気候変動に関心を持ち始めています。彼女は「普通の人々こそが真の力を発揮できるのです」と訴えました。皆様にも環境の問題に関心を持ち続けてほしいと思います。

 気候変動による大災害のたびごとに、同朋大学の学生ボランティアの方々が中村公園の駅頭などで被災地域のカンパを募る活動に参加されているのを見てきました。私は、ここにも「共なるいのちを生きる」精神が息づいていることを確認し、心が和んだものです。皆さまの中にも、こうした活動を含め、地域ボランティアなど様々な活動に参加された方が多く見えると思います。こうした社会参加の活動は後輩に脈々と引き継いでほしいと願っています。

 卒業生の中には、視覚障がいの方、聴覚障がいの方が見えます。
幼い頃に両眼の視力を失い、そのハンディを克服してこられました。彼女に学長室に来ていただいて話を伺いましたが、今年、福井県で開催された障がい者スポーツ大会陸上競技で800mと1500mで2位になるという快挙を成し遂げられました。彼女らが卒業できるのは、ご本人たちの努力に加えて、学業生活を支えてこられた多くの同級生や教職員などの協力支援があったからにほかなりません。卒業後も、ハンディを克服し社会で活躍いただけるものと信じています。どうか頑張ってください。アイカ―やノートテイカーとして、障がい者の支援に参加されている学生諸君にもお礼を申し上げます。本当にありがとう。

 私は、同朋大学は、障がいを含む多様な人々が快適に過ごせるキャンパスでありたいし、そうしなければならないと考えています。

 さて、私たちの周りを見れば、東アジアには平和の風が吹きつつあるように思います。今後の紆余曲折は多々あるでしょうが、世界中で戦争は嫌だ、平和が欲しいという声は着実に大きくなっていると思います。中東やアフガンでの戦争を見ても、戦争で犠牲になるのは一般市民です。第二次大戦時の激戦地沖縄では20万近い日本側死亡者の半数以上が住民の犠牲者といわれていますし、広島や長崎の原爆被害を見れば明白です。その沖縄では今も戦争の影響が続き、日本の米軍基地の7割以上が沖縄に集中し、多くの県民の反対にもかかわらず、辺野古新基地計画が進んでいます。私には、民意を無視した政府の横暴としか思えません。日本国憲法は、第九条で戦争放棄と戦力不保持を決めました。中米の国コスタリカは真に軍隊を持たない自然豊かな国として知られています。このコスタリカのように軍事費をゼロにして、そのお金を教育や文化のために使う国になってほしいし、人々が生活に苦しまなくてもいい国、高等教育を受けたい人が自由に受けることのできる国になってほしいと願っています。

 「現代物理学の父」と称されるアインシュタイン博士は、「教育とは学校で学んだことをすべて忘れたそのあとに残っているものだ」という名言を残しています。さて、皆さんが卒業されて10年後、20年後、30年後と年が経つとともに皆様の記憶の中には、この学び舎で学んだ何かが残っている、と思います。節目では頭に残る何かに思いめぐらし、あなた方が同朋大学で受けた教育のことを思い出してください。

 大学の満足度調査に回答いただいたと思いますが、データは昨年度卒業生のものですが、7割の学生の皆さんが、1年次からの専攻や少人数教育にプラスの評価をされ、基礎ゼミなどには6割超の皆さんがプラスの評価をされています。自由記述では、教員との距離が近いことなど同朋大学が力を入れて取り組んでいることを評価されています。もちろん、大学の問題の指摘もIT環境や情報提供の在り方などに3割超の皆さんが不満をお持ちでした。私たちは、学生の皆さんの意見に真摯に耳を傾け、問題や課題の解決に向け誠心誠意取り組んでまいります。そして、同朋大学で過ごした学生生活に心から満足いただくよう、今後とも取り組んでいく覚悟です。

 勉学・研究に、スポーツに、クラブ活動に、一生懸命取り組まれ、卒業修了式を迎えられた卒業生、修了生の皆さんに心からの祝福を送ります。あなた方が社会に出られて、これから歩まれる道は、決して平たんな道ではありません。山あり谷ありの人生を歩まれることになりますが、壁にあったたら、迷わず相談に来てください。学びたくなったら、大学に戻って来てください。

 私は、様々な場面で「なぜ、どうして」と立ち止まって考えることにしています。皆さまも、その時々で自分を振り返り、日本のこと、世界のことを「なぜ、どうして」の気持ちで振り返っていただき、お一人お一人が長い人生を焦らず着実に歩まれ、悔いなく送られることを願っています。そして、卒業・修了後も母校としての同朋大学への引き続くご支援・ご協力をお願いし、卒業・修了式の学長式辞といたします。本当におめでとうございます。

2019 年 3 月 22 日

同朋大学 学長 松田 正久