2022年度同朋大学入学式式辞

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 同朋大学2022年度入学式にご出席のすべての皆さま、ご入学おめでとうございます。満開の桜の花のもと、COVID-19、コロナの中、屋外で入学式を行うこととしました。皆様をこれまで育んでいただいたご家族の方を含め保護者の方々、来賓の方々は、ご出席をご遠慮いただきました。

 先ほど、入学を認定いたしましたが、文学部100人、社会福祉学部172人、編入学9人、大学院人間学研究科15人、別科(仏教専修)28人の計324人の方が入学されました。学部生の多くの方は若い方々です。と同時に学部にも、大学院や別科には社会人・シニアの方も入学されています。また、障害をお持ちの方のご入学もあります。多様性に富む方々からなる大学が同朋大学です。

私立大学は、建学の理念に基づいて成り立っている大学ですが、同朋大学の建学の理念は、「同朋和敬(どうぼうわきょう)」、「同朋」は、浄土真宗の宗祖(しゅうそ)の親鸞聖人がともに教えを聞く仲間を「御同朋、御同行」と呼んだことにより、また、その親鸞聖人が日本仏教を開いた方として尊敬した聖徳太子の「和をもって尊し」「篤く三宝を敬え」の「和」と「敬」の精神をいただき、「同朋和敬」としています。やさしく言うと「共なるいのちを生きる」、英語では「Living Together in Diversity」です。Diversityは、日本語で多様性と訳しますが、多様性の中でともに学ぶ、育ち、歩むという建学の理念のもと、本学では、皆様お一人お一人を、人格を持った個人として尊重し、その学びを保障していきます。

 さて、これから三つのことを述べ、皆様にお願いしたいと思います。まず、一番目です。

 皆様も連日スマホやテレビの画面を通して報道されているロシアによるウクライナへの武力攻撃・侵略の問題です。ウクライナは独立主権国家で、国連の加盟国194か国の一つです。国連は、武力による紛争の解決を「平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現する」としており、ロシアのウクライナ領土への侵攻・侵略は国連憲章違反であることは言うまでもありません。第二次世界大戦の反省の上に、国連憲章や我が国の憲法は作られました。一刻も早く、ロシアがウクライナから撤退し、平和な日々がウクライナに戻ることを願っています。戦争で犠牲になるのは常に一般市民です。我が国の憲法九条を、今一度読み返してください。ここには、全世界が進むべき崇高な理念が書かれていると私は考えます。ドイツのワイツゼッカー元大統領の「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目になる」と述べたことを思い出します。過去の歴史を踏まえ、様々な事象から、今に活かす「考える力」「現在を直視する力」を我が同朋大学で身に着けてください。

 二番目は、「懐疑主義=物事を疑うこと」の勧めです。現代社会は、様々な情報が溢れる社会です。その中にはファクトもあればフェイクもあります。何が真実で何が嘘か?懐疑とは簡単に言うと、物事を疑うということです。そう言うと、人の言うことを信用しないのか、と言われそうですが、そうではありません。懐疑、つまり物事を疑うということは「問い」を持つということです。「問う」ことを「学ぶ」ことを「学問」と言います。皆様は、これまでの生活の中で多くの方が、小・中・高を通じて、周りの意見に従うことがなにかと「メリット」が多いことを感じてきたかもしれません。でも、一度「なぜ、どうして」と考えてみてください。この疑問の問いかけを習慣化することです。正門入り口の右に「『何故、どうして』と問うことの大切さ、それを理解することこそ教育の神髄だ」と書いてあります。このことが、文明・文化、科学や技術を発展させる基になったのです。すべて、最初は、少数の意見、あるいは誰もが考えつかないことを疑うことから始まりました。金子みすゞさんの詩「不思議」の最後は「わたしは不思議でたまらない たれに聞いても笑ってて あたりまえだということが。」とあります。最初は、地動説は少数派で迫害もされましたが、最終的には真実になったように、こうした例は当たり前に起きています。この「なぜ、どうして」を身に着け、学生生活を送ってください。

 最後に、三点目。同朋大学での学びについてです。まず1年生の時に、皆さんはそれぞれの学科や専攻の先生のもとで、基礎ゼミを受けることになっています。学修の仕方を十分身に付けていない人もいるでしょうし、スポーツに高校時代のすべてを注いできた人もいるでしょう。でも、大学は所定の単位を取らないと卒業できません。大学に行きたくなくなったり、友達関係がうまくいかなくなったりすることもあるでしょう。私たちは個人の情報を最大限尊重しながら、対処しますので、ゼミ担当の先生に悩み事があったら問題を一人で抱え込まないよう遠慮しないで尋ねてください。オフィスアワーには、研究室で先生方が皆さんをお待ちしています。また、履修単位や資格課程の単位など分からないことは事務部の職員にお尋ねください。コロナ禍の中で、経済的に困っている方もいると思います。大学では、国や本学独自の支援も行っていますので、事態が悪化する前に、遠慮なくお尋ねください。また学生相談室や健康管理室、障害学生支援室など、その道の専門家が皆様の心身の健康や学び支援に関する相談に応じる仕組みを作っています。こうした大学の仕組みを有効に使ってください。「相談する勇気」を持ってください。

皆さんが、一人ひとりの持っている個性をさらに伸ばし、この大学で大きく成長させてくれることを期待します。日本では今、選択的夫婦別姓を求める人たち、ジェンダー平等を求める人たち、性的マイノリティLGBTQと呼ばれる人たち、がそれぞれの形で運動を進められており、こうした多様性を認め合う社会になってほしいと私は思います。この、多様性ある社会は、個人の尊重と密接に関連していることを自覚して、同朋大学での学生生活を送っていただきたい。

 一つは「考える力、現実から逃避しない勇気」、二つは「何故、どうしてと問うことが学問の始まり」、三つ目は「同朋大学での学び、相談する勇気」です。これら三つの点についてお話ししましたが、COVID-19、コロナの中で、同朋大学は、最大限対面授業を重視していきたいと考えています。しかし、やむを得ず遠隔授業にせざるを得ない事態も起こりえることも覚悟しておかなくてはなりません。先のことは見通せませんが、学生の皆さんへのさまざまなお知らせは、「DOHOポータル」というwebシステムでお知らせしていきますので、一日に一回は何をさておいても「DOHOポータル」へのアクセスは習慣化してください。

今日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、すべての1年生は成人=大人になり、成人としての権利に加え、義務や責任も生じます。残念なことですが、この世には社会経験の少ない若者をマルチ商法に引き込もうとするような、様々な罠があります。こうしたことには十分な注意を怠らないでください。うまい話には決して乗ることのないように、まずは相談してください。

最後になりますが、新入生の皆様には何よりも自分を大事にすると同じく他者を思いやる気持ちをお持ちいただき、学修を真ん中に据え、クラブ活動に、友達つくりなどに精進いただき、これからの同朋大学での生活が充実したものとなることを期待するとともに、教職員一同皆様の同朋大学での生活と学びを全力で支えていくことを表明し、私の入学へのお祝いのメッセージといたします。同朋大学へのご入学、本当におめでとうございます。

2022年4月1日

同朋大学学長 松田 正久