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2025年度 卒業式を執り行いました


2025年度3月23日(土)、2025年度 卒業式を執り行いました。
卒業生の皆様、おめでとうございます。

【学長式辞】

本日、学位を授与された228名の皆さん、別科を修了された34名の皆さん、御卒業、御修了おめでとうございます。
ご家族および関係者の皆様、本日はおめでとうございます。来賓の皆様、ご多用のなか御列席たまわり、ありがとうございます。
本日卒業される文学部、社会福祉学部の皆さんの多くは、4年前、2022年の春に入学されました。まだ新型コロナ感染症の影響が甚大で、入学式は、この成徳館の建物の前、青空の下、全員マスク着用で行われました。現在はすでに教室授業の日常に戻り、各種の実習や研修も再開しています。一方で、感染症の拡大期に始まったオンラインのシステムや体調不良事のマニュアルなどは、その後も引き続き利用されています。そんなふうに、本年度卒業される皆さんとは、時代の変わり目に、新しいキャンパス生活の在り方を、ともに模索してきました。一時はほとんど中断していた学生主催の行事も、皆さんが入学した年から再開しました。大学祭、スポーツ祭、留学生交流会など、以前の伝統を知る先輩が卒業してしまったなか、手作りで新しい伝統を再び作り出す作業に取り組んでくださった皆さんには、心より感謝しています。
4年前、2022年の11月、オープン社が対話型生成AIサービスの「チャットGPT」を公開しました。それから様々なAIサービスが登場し、現在では知識や情報の収集や整理だけでなく、日常生活の相談相手としても欠かせないツールになりました。皆さんは将来、大学生活に生成AIを活用して卒業した最初の世代として記憶されるかも知れません。
私もこの新しい技術から多くを学んでいます。特に対話の仕方はたいへん参考になります。生成AIは、相手に不快感を与えないように設計されており、問いかけに対して、決して否定的な返事をしません。まず共感や肯定の言葉から入ります。最近は、特にネットやオンライン上の議論の場で、まず相手の意見を否定して優位に立とうとする人も多いので、こういう態度はAIに見習いたいものです。
一方で困った点もあります。AIはさまざまな新しい情報を届けてくれますが、それらを選ぶ規準となる考え方は、ユーザーから学習します。なので、ユーザーにとっては、本当の意味での新しい出会いがありません。たとえば音楽配信サービスは、過去の履歴に基づいて自動的に「あなたの好きな新曲」を紹介してくれますが、初めてなのに、どこかで聞いたような作品ばかりで、新鮮さが感じられません。悩み相談にも乗ってくれますが、こちらの考えをトレースして返事をするので、結局ある種の自問自答になってしまいます。
ですから、自分の考えを整理したいとか、自分のなかでほぼ答えが見つかっていて、あと一歩を踏み出せないでいる、というようなときには、AIはとても適確な助言をくれると思いますが、自分の限界に悩んで、いまの自分を越えたい、殻を破りたいと、もがいているような時には、あまり良い相談相手になってくれそうにはありません。実際、チャットGPTに「自分の殻を破るにはどうしたらいいですか?」と質問してみたところ、「いきなり殻を破ろうとするのではなく、小さくこつこつとヒビを入れ続けることが大切です」という返事が返ってきました。
けれども、学校で学ぶということは、その学びを通して、自分が成長する、変わってゆくことです。過去の自分の殻を破って、新しい自分に出会うことです。皆さんも学生生活のなかで、こつこつとヒビを入れる努力は重ねてきたと思います。もうすでに新しい自分に出会えたという方も、まだこれから、という方もおられるでしょう。いずれにせよ、社会に出てゆく皆さんは、きっと今後も何回か、自分の意見が理解されない、評価が得られない、という歯がゆい思いを経験し、自分の殻を破り、自分から変わらなければならない、そういう壁にぶつかるだろうと思います。
理解を得られない、価値観を共有できない時、相手とどう向き合えばよいか。これは現代社会の大きな課題でもあります。そんな状況に直面したとき、皆さんに思い出していただきたいのが、同朋大学の建学の精神です。今日はもう一度、その言葉「同朋和敬」「共なるいのちを生きる」「Living together in diversity」(多様性のなかを共に生きてゆく)という言葉を、心に刻んでおいていただきたくて、この式辞を述べています。
私たちは、性別、人種、国籍、身体や心の能力、文化の違いなど、お互いに異なる環境や条件のもとで生まれ育っています。そういう違いのなかで、おのおの自分なりの考え方の規準、自分なりのものさしを持っています。それぞれ違うものさしで測れば、違う数値が出るのは当然です。結果として、みんな自分が正しいと思っているのに、理解しあえないという状況が起こります。そしてやがて多数派や、力のある人々が、少数派や弱い人々を抑圧し、差別したり、国家や民俗の対立から戦争が起こったりします。感情をもたない生成AIが中立的な解決策を考えてくれれば良いのですが、まだ難しそうです。できたとしても、すべての人間がそれに納得するかはわかりません。
これから社会に出る皆さんに大切にしていただきたいことは、人として向き合うこと、理解し合えないと思った相手とでも、テクノロジーを介さず、人として、きちんと向き合う姿勢を持つことです。それは相手を論破するためではありませんし、自分の非を認めるためでもありません。どちらかが正しくて、どちらかが間違っている、という考え方そのものを離れるためです。
私たちはそれぞれ自分のものさしを持っていますが、そのどれかが絶対に正しいということはありません。仏教的に言うと、私たちの価値観はどれも愚か者の、凡夫のものさしです。ついつい自分の都合を優先してしまって、正しくないのです。でもそれしかもっていないので、捨ててしまうわけにもいきません。正しくはない、正しくはないけれども、それしかない。これを仏教では「凡夫の自覚」と申します。
正しくないけれど、それしかない。そう自覚したうえで、それしかない自分の思いも大切にしながら、同時に、自分が正しいという思いこみも捨て、人と向き合ってください。そこから、多様な価値観の違いが差別や争いを生む現実が見えてきます。
どうか皆さん、それぞれの場所で、弱い立場の人々に寄り添いながら、違いを越えてつながり、互いを敬い、扶けあう社会の実現にむかって、それぞれの現場で歩んでいってください。「同朋和敬」「共なるいのちを生きる」という建学の精神には、そんな卒業生の皆さんにずっと寄り添う、大きないのちのつながりが表現されています。もしそのことをあらためて確かめたくなったときは、いつでもまた、このキャンパスを訪ねてください。私たちは、同窓会やホームカミングデイなど、卒業されたみなさんとのつながりを、これからも今まで以上に大切に育てていきたいと考えております。いつかまた、ひとまわり大きくなった姿を見せてください。
正門の脇に掲示板があります。今年、バス停留所の場所が移動して、ご覧いただける機会が減ってしまいましたが、今月は、ディケンズの小説から、皆さんを送る言葉を引用したので、よかったら帰りに見て行ってください。チャールズ・ディケンズは、ヴィクトリア朝の作家で、格差や貧困の問題が深刻化した19世紀イギリスで、社会的弱者に寄り添う小説を発表し続けました。今回引用したのは、寄宿学校でつらい目にあっていた孤独な少年が、それを救ってくれた友人に、学校を出て離れ離れになるとき、言ったことばです。
「別れの痛みは、再会の喜びに較べれば何でもない(The pAIn of parting is nothing to the joy of meeting agAIn)」(チャールズ・ディケンズ『ニコラス・ニクルビー』第13章)
あらためまして、みなさん、御卒業、御修了、おめでとうございます。
2026年3月23日 同朋大学学長 福田 琢

卒業式の様子

校歌を歌う様子

全体写真


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