2025年度 前期卒業式を執り行いました
2025年度9月24日水曜日、2025年度 前期卒業式を執り行いました。
卒業生の皆様、おめでとうございます。
卒業生の皆様、おめでとうございます。
【学長式辞】
本日卒業される文学部仏教学科二名、人文学科四名、社会福祉学部社会福祉学科 社会福祉専攻四名、子ども学専攻一名、大学院人間学研究科一名、全員で十二名のみなさん、おめでとうございます。
朝夕、日に日に涼しくなってきて、そろそろ2025年も後半、一年の締めくくりということを意識し始める季節になりました。みなさんのなかには、すでに卒業式を待たずに次のキャリアに進んでいる方がいるかもしれません。前期卒業証書授与式はどうしてもそういう、少しあわただしい時期に行うため、諸事情で出席できない卒業生もいらっしゃいます。そんななか、本日ご出席されたみなさんには、お祝いと同時に、お礼の言葉も申しあげたいと思います。そして、この機会にあらためて、同朋大学の建学の精神とは何か、ということを共有したいと思います。いまさらそんなことは言われなくても分かっています、という気持ちで聞いていただければ、とても嬉しいのですが、もしそうでなくとも、ここでもう一度、しっかり心に刻んでください。
本学の建学の精神は「同朋和敬」です。このことばには親鸞、そして聖徳太子という二人の仏教者が、それぞれの時代に向けて語りかけた連帯のメッセージが重ねられています。私たちのいのちは、それぞればらばらにあるのではなく、共なるいのちをいただいて生きている、そのことを大切にしよう、という親鸞の同朋精神と、だから私たちは、お互いの存在を尊重し、敬いあわなければならない、という聖徳太子の和の精神、この二つです。それを私たちは、現代の人々にも届きやすいように、「共なるいのちを生きる」そして英語で「Living together in Diversity」と表現しています。
ただし、もうご存知とは思いますが、これからみなさんが出てゆく社会は、基本的に競争社会です。たとえば、コンペなどで競り勝ったほうが勝ち、お金を稼いだほうが勝ち、生き残った者が正しい、そういう原理で成り立っています。その結果に納得のいかないことも決して少なくありません。しかし、生活のためにはお金を稼がなければならないし、仕事のうえで、回りの人々と競争して勝ち残っていかなければなりません。
ただそんな時も「共なるいのちを生きる」という言葉を学んだみなさんには、何のために競争するのかを考え、勝ち負けの先にあるものを見つめてもらえればと願っています。ひとりだけ勝ち残っても、社会全体が沈んでしまえば、そのなかで生きている個人も幸せにはなれない。だからほんとうに勝ち残るためには結局、みんなが幸せになる道を選ぶことになる、そんなふうに建学の精神をぜひ活かしていただきたいのです。
そのために大切なことは二つあると思います。ひとつは信頼関係。勝ち負けを争うにしても相手が必要ですし、誰とも取引せずにお金を稼ぐことはできません。そこには必ず、競争する相手や取り引きする相手があり、一定のルールがあります。これはスポーツの試合と同じです。最初からルールを、無視する人と競うことはできません。まったく信用できない人を相手に取引はできません。土台となる信頼関係を築くことが必要です。ところが最近は、その大事な前提を飛ばして、いきなり勝ちを宣言する人も増えてきました。本学の卒業生には、ぜひ信頼関係を大切に、社会の様々な人々と競い合っていただきたいと思っています。
もうひとつ、特に最近、伝えたいと思ったのが、その信頼関係をつくるために、きちんと議論することです。私たち教職員はときどき、本学の卒業生の就職先でもある企業や施設の方々からお話を聞く機会があるのですが、最近よく、こんなことを言われるようになりました。「同朋大学の卒業生は、みんな勝手な自己主張をせず、周りをよく見て、気を使って行動してくれます。仕事をする現場はとてもいい雰囲気です。ただ、ディベートのときに、みんな自分の意見をあまり言わない。グループワークでのコミュニケーション力も、最近ちょっと落ちているような気がする」後半の話は、最近の若者全般に通じることのようです。
本学の卒業生のみなさんは、協調性はほぼ合格点、そこはすばらしい。しかし一方で、自分の意見、特に反対意見をはっきり言うことも必要です。納得がいかないまま相手にあわせていては、信頼関係は築けません。ときには自己主張もして、議論してください。競い合う勇気があってこそ、扶け合う勇気、認めあう勇気も身についていきます。そういう意味も、本学の建学の精神には込められていると、私は思います。
争いの絶えない現代の社会ですが、同朋大学卒業生のみなさんには「共なるいのちを生きる」力があります。それぞれの現場で、戦いながら、競いながら、人と人との関係性、いのちのつながりを大切にして、自分や周りの人々の心や生活を、より豊かに、幸せにして、少しずつ世の中を変えてゆく道を歩んでください。また、時間が出来たら、教員や職員のみなさんに顔を見せに来てください。
そして後輩たちを励ましてやってください。
改めまして、本日は御卒業おめでとうございます。
二〇二五年九月二四日 同朋大学学長 福田 琢
朝夕、日に日に涼しくなってきて、そろそろ2025年も後半、一年の締めくくりということを意識し始める季節になりました。みなさんのなかには、すでに卒業式を待たずに次のキャリアに進んでいる方がいるかもしれません。前期卒業証書授与式はどうしてもそういう、少しあわただしい時期に行うため、諸事情で出席できない卒業生もいらっしゃいます。そんななか、本日ご出席されたみなさんには、お祝いと同時に、お礼の言葉も申しあげたいと思います。そして、この機会にあらためて、同朋大学の建学の精神とは何か、ということを共有したいと思います。いまさらそんなことは言われなくても分かっています、という気持ちで聞いていただければ、とても嬉しいのですが、もしそうでなくとも、ここでもう一度、しっかり心に刻んでください。
本学の建学の精神は「同朋和敬」です。このことばには親鸞、そして聖徳太子という二人の仏教者が、それぞれの時代に向けて語りかけた連帯のメッセージが重ねられています。私たちのいのちは、それぞればらばらにあるのではなく、共なるいのちをいただいて生きている、そのことを大切にしよう、という親鸞の同朋精神と、だから私たちは、お互いの存在を尊重し、敬いあわなければならない、という聖徳太子の和の精神、この二つです。それを私たちは、現代の人々にも届きやすいように、「共なるいのちを生きる」そして英語で「Living together in Diversity」と表現しています。
ただし、もうご存知とは思いますが、これからみなさんが出てゆく社会は、基本的に競争社会です。たとえば、コンペなどで競り勝ったほうが勝ち、お金を稼いだほうが勝ち、生き残った者が正しい、そういう原理で成り立っています。その結果に納得のいかないことも決して少なくありません。しかし、生活のためにはお金を稼がなければならないし、仕事のうえで、回りの人々と競争して勝ち残っていかなければなりません。
ただそんな時も「共なるいのちを生きる」という言葉を学んだみなさんには、何のために競争するのかを考え、勝ち負けの先にあるものを見つめてもらえればと願っています。ひとりだけ勝ち残っても、社会全体が沈んでしまえば、そのなかで生きている個人も幸せにはなれない。だからほんとうに勝ち残るためには結局、みんなが幸せになる道を選ぶことになる、そんなふうに建学の精神をぜひ活かしていただきたいのです。
そのために大切なことは二つあると思います。ひとつは信頼関係。勝ち負けを争うにしても相手が必要ですし、誰とも取引せずにお金を稼ぐことはできません。そこには必ず、競争する相手や取り引きする相手があり、一定のルールがあります。これはスポーツの試合と同じです。最初からルールを、無視する人と競うことはできません。まったく信用できない人を相手に取引はできません。土台となる信頼関係を築くことが必要です。ところが最近は、その大事な前提を飛ばして、いきなり勝ちを宣言する人も増えてきました。本学の卒業生には、ぜひ信頼関係を大切に、社会の様々な人々と競い合っていただきたいと思っています。
もうひとつ、特に最近、伝えたいと思ったのが、その信頼関係をつくるために、きちんと議論することです。私たち教職員はときどき、本学の卒業生の就職先でもある企業や施設の方々からお話を聞く機会があるのですが、最近よく、こんなことを言われるようになりました。「同朋大学の卒業生は、みんな勝手な自己主張をせず、周りをよく見て、気を使って行動してくれます。仕事をする現場はとてもいい雰囲気です。ただ、ディベートのときに、みんな自分の意見をあまり言わない。グループワークでのコミュニケーション力も、最近ちょっと落ちているような気がする」後半の話は、最近の若者全般に通じることのようです。
本学の卒業生のみなさんは、協調性はほぼ合格点、そこはすばらしい。しかし一方で、自分の意見、特に反対意見をはっきり言うことも必要です。納得がいかないまま相手にあわせていては、信頼関係は築けません。ときには自己主張もして、議論してください。競い合う勇気があってこそ、扶け合う勇気、認めあう勇気も身についていきます。そういう意味も、本学の建学の精神には込められていると、私は思います。
争いの絶えない現代の社会ですが、同朋大学卒業生のみなさんには「共なるいのちを生きる」力があります。それぞれの現場で、戦いながら、競いながら、人と人との関係性、いのちのつながりを大切にして、自分や周りの人々の心や生活を、より豊かに、幸せにして、少しずつ世の中を変えてゆく道を歩んでください。また、時間が出来たら、教員や職員のみなさんに顔を見せに来てください。
そして後輩たちを励ましてやってください。
改めまして、本日は御卒業おめでとうございます。
二〇二五年九月二四日 同朋大学学長 福田 琢