2020gakuijuyoshiki

式辞

 今日の卒業・修了の日を迎えられた学部・大学院の皆様、おめでとうございます。2019年度卒業生は、文学部51人、社会福祉学部139人の総計190人、大学院は博士前期課程12人、博士後期課程を修了され文学博士の学位を授与される日比野君の1人、総計大学院は13人です。別科修了は、28人ですので、総数231人が卒業・修了される方々です。

 桜の花も開花の便りが聞こえますが、2020年の年初から、中国武漢市に端を発した新型コロナウィルスの世界的拡大により、例年通りの卒業式は挙行できないこととなり、こうした簡素で時間を短縮した屋外での卒業授与式に変更いたし、皆様には大変申し訳ない事態となりましたこと、大学を代表しお詫び申し上げねばなりません。しかし、こうした事態もそうあることではありませんので、今日のこの日をしっかりと胸に刻んで、同朋大学での学びをこれからも時々振り返ってほしいと願っています。今日、皆様の保護者の方の出席もご遠慮いただいているのですが、代表して共育後援会会長磯村様に出席をいただいていますのでご紹介をしておきます。

 コロナウィルスの問題がなければ、この場で各学科・専攻やクラブの後輩たちが、皆様の卒業を祝福してくれるのですが、それもありませんので、とても残念ですし、最初で最後の屋外での卒業証書授与式にしてほしいし、新型コロナウィルス感染もできるだけ早く終息してほしいと願っています。さいわい、これまで学生・教職員を含む同朋大学関係者で感染したという方はお見えにならず、今日のこの日を迎えられたことを学長としてうれしく思います。

 さて、今から30年前には東西冷戦が終わり、世界史が大きく動いた1989年から1991年、当時私は40代の前半でしたが、その後の世界の在り方に大きく期待をしたものです。あなた方の多くの方が生を受ける7、8年前の出来事でしたが、私にとってはついこの間のことのように思えます。当時は気候変動の問題もようやく話題になりかけたころで、その先駆けとなる京都議定書がCOP3で採択されたのが1997年、パリ協定は2015年COP21の会議でした。昨年は、COP25がスペイン・マドリードで開かれ、スウェーデンのグレタ・ツンベリさんの発言が若者の取り組みを鼓舞し、世界で数百万の若者が私達の未来を奪うなと気候危機に呼応し、行動に立ち上がりました。昨年は、オーストラリアやブラジルでの森林火災、世界中での洪水被害やヨーロッパでの熱波、日本でも台風19号の被害が長野県や関東を中心に起きました。世界の平均気温は昨年は2016年に次いで2番目に高かったそうで、臨界点を過ぎたのではという研究者もいます。地球規模で起こる気候危機も人類の活動が生み出したものに間違いありませんし、コロナ問題は、社会のシステムの脆弱性を改めて実感させてくれました。2011年の東日本大震災から、私たちは大きな教訓を得たはずでしたが、原発再稼働にこだわる等日本はいまなお、十分な教訓を引き出せてはいないようで、誠に残念な気持ちにならざるを得ませんし、再生可能エネルギーの普及も日本では遅々として進まず、世界の流れから取り残されています。

 少し暗い話になりましたが、君たち若い人たちがこれから創っていく社会は、君たち自身の力で創ることができるのだということを、昨年の香港の若者の運動や気候変動危機に取り組む世界中の若者が私たちに示してくれました。

同朋大学で学び遊び諸先生方とゼミや卒論・修論指導で語りあった日々を思い出してください。 あなた方一人一人が、同朋大学で学んだ力を基礎に、自分の頭で考え、これからの社会のありようを自分たちで創る意気込みで、自信をもってこれから生きていってほしいと願っています。そして、何か困難にぶち当たっても、それを自分一人で抱え込まないで、いつでも大学に戻ってきて相談してください。同朋大学の教員や職員の方々はいつになっても君たちを見守ってくれると確信しています。

世界は、様々な紆余曲折を得ながらも、国境や宗教、民族の差異を超えて、平和の中に発展していってほしいと願っています。戦争ほど人々を不幸にするものはないと君たちには強く訴えておきたい。これは、少しばかり君たちより長く生きている私の心からの思いです。親鸞聖人の教えにも「兵矛無用」「国富民安」という言葉ありますが、私はこれらの言葉に強い共感を覚えます。

 君たちが、世界の若者と同じ思いを共有し、人ひとりが希望をもって平和の中に生きられる、そうした社会の一員として力強くあなた方の歴史を紡いでいただくことを心から願って、私の式辞といたします。皆さん今日は本当におめでとうございました。改めて保護者の皆様にも心からの祝福を申し上げます。

2020年3月23日

同朋大学学長 松田 正久