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卒業証書授与式 式辞

 桜の開花が例年になく早く聞こえてきますが、今日3月23日の良き日、同朋大学は第69回目の卒業式を迎えることができました。2020年度は、文学部では仏教学科12人、人文学科56人の計68人、社会福祉学部社会福祉専攻113人、子ども学専攻53人の計166人、総計234人の学部卒業生の皆さん、大学院では文学研究科1人、人間福祉研究科人間福祉専攻1人、同臨床心理専攻5人の総計9人の大学院修士課程の皆さん、別科(仏教専修)19人の併せて262人のすべての皆さん、卒業・修了式おめでとうございます。これまで、皆さんを温かく見守り、励ましてくれた保護者の方々の出席はコロナ禍のため、かないませんが、共育後援会会長の安藤様、また皆様の先輩にあたります同窓会の役員の方々にもご出席いただきますが、今日は同窓会長の佐藤様が代表でご出席でございます。同朋学園関係者も今日は欠席されています。本学は、東本願寺学校連合会の一つですが、その関連校からは、多くの卒業をお祝いするメッセージをいただいています。本当にありがとうございます。

少し本学の歴史を振り返りますと、第二世界大戦の復興もままならない中で、1950年に「同朋和敬」という言葉を建学の理念におき、東海同朋大学として、この稲葉地の地に開学し、発足10年目の1959年に同朋大学に変更し、今日に至っています。2020年度は、開学70周年にあたる記念の年でしたが、ご存じのようにCOVID-19、いわゆる新型コロナウィルスの感染拡大もあり、すべての記念行事も見送らざるを得ませんでした。思い返せば、前期の授業開講も大幅に遅れ、前期が始まったのが5月11日で、それも遠隔授業による開講でした。学生の皆さんも教員も不慣れな中で、何とか授業を開始し、6月中旬まで遠隔授業を続けました。その中で、第一波が収まり、緊急事態宣言が解除され、大学では対面授業に戻し、7月29日まで続けたのですが、第二波の感染拡大を受け、8月中は登校禁止にせざるを得ませんでした。後期は一部を除きほとんど対面授業で行いました。このように、今年度は、コロナ禍という異常事態の中で、皆様も本当に大変な思いの中で、勉学を続けられ、今日の卒業式を迎えることになりました。第三波の緊急事態宣言も、愛知では1月から2月末まで続きました。集中講義もほとんどを遠隔に切り替えて行いました。あっという間の一年でした。

世界の流れには遅れていますが、3月に入り、ワクチン接種も医療関係従事者を中心に始まっており、今年の終わりには沈静化してほしいと願っています。感染者は、3月20日現在で、世界では1億2千万人、ほぼ日本の人口に匹敵する数で、亡くなった方は260万人を超え、名古屋市の人口を上回っています。日本では、感染者45万人、亡くなった方は8千人を超えています。

こうした事実から、皆さんは、人間の知恵、科学・技術のもろさを感じられたかもしれません。この地球に人類が誕生したのは数十万年前で、新人類誕生は20万年前と言われていますが、地球の46億年の歴史からすれば、1年に例えると、20万年は大晦日の年が明ける二分前のわずかな時間です。そして、産業革命後の100数十年は、1秒にも満たないわずかな時間でしかありませんが、46億年かけて変遷して来た地球の歴史を崩してしまうだけの変化を人類が与えてきたのも事実です。これが、地球温暖化であり気候変動です。新型コロナの原因は不明ですが、この気候変動が影響していることは否めないと思います。これが進めば、海面平均は2050年には数十㎝、2100年には1mを超すと予測されています。地球の温暖化をいかに食い止めるか?人間の活動が、生物の多様性を否定し、住みにくい地球を作り出しているのだから、人間自身がこれを止める責任があります。

地球の温暖化、核兵器や原発などの負の遺産を君たち若い世代に引き継がざるを得ないことは、本当に心苦しく思います。核保有国とそれに同調する国は、多くは大国とその同調国、日本もその一つです。それに対し、多くの小国を中心に署名国は86か国、批准国は54か国で、今年1月22日核兵器禁止条約が発効しました。このことは、被爆者の方々にとっても多くの日本の人たちにとっても、本当にうれしいニュースでした。こうした未来につながる動きが出てきています。私はあなた方にこうした人類の英知を繋ぎたいと願っています。

さて、あなた方262人が、同朋大学で学んだ4年間はどのようなものだったのでしょうか?大学は毎年、満足度調査を行い、大学生活を振り返ってもらっています。その中で、「仲間と出会えたこと」「先生の優しさと話しやすさ」など、うれしい声がたくさんありました。私は、同朋大学の良さは、一人ひとりの顔が見える大学、学生諸君を一番に考える大学、多様な学生が共に学べる大学であると思っています。皆さんの声の中にこうした点を上げてくれるのは、学長冥利だと感じました。また、スポーツに青春をかけた諸君もみえるでしょう。今年度は、練習や試合もままならず、ストレスがたまる一年だったろうなと思いますし、資格取得のための実習も中止になったり何度も変更になったりと不便を強いられた皆さんも多かったと思います。しかし、皆さんは、こうした逆境にもめげず、ここに卒業式を迎えられました。君たちが歩むこれからの人生は、今まで以上に、予測不能かもしれませんが、世界はより狭くなり、ボーダーレス化が進み、グローバル化は進んでいくと思います。まさに、「同朋和敬=共なるいのちを生きる Living Together in Diversity」が試される時代になるでしょう。正門の横に、「教育とは、学校で学んだことを忘れた後に残っているものだ」とうアインシュタインの言葉が書いてあります。皆様が、10年後、20年後、そして50年後にこの同朋大学での学びを振り返る時、きっと残るものがあるはずです。皆様がそれぞれの人生を紡ぎながら、これから歩んでいただくことを期待して、私の式辞といたします。

2021年3月23日

同朋大学学長

松田 正久