2022sotugyoshiki

2022年3月23日      

同朋大学学長 松田 正久

 今日の卒業式を迎えらえた文学部71人、社会福祉学部141人の学部生212人、別科21人、大学院14人の総勢247人の卒業・修了生の皆さん、卒業・修了おめでとうございます。周りを見ていただくと、今冬の寒さのため、まだ満開とは言えませんが、桜の開花も始まり、皆様の門出を祝ってくれています。

 屋外での卒業式も、今年で三回目となりました。日本では、2020年の1月から広がったCOVID-19、いわゆる新型コロナウィルスの感染を防ぐための措置でした。3年目に入った今もなお、オミクロン株の感染拡大が続いており、こうした形での卒業式にせざるを得なかった事情をなにとぞご理解いただきたいと存じます。

 さて、皆さんの多くは2018年4月の桜咲くとき同朋大学に入学され、この学び舎での学業を今終えられようとしています。この2年間は、コロナの中での大学生活を強いられ、様々なご苦労を学びの中でお願いすることになりました。2020年の4月に最初の感染者が出て以来、大学は対応に追われ、皆様にはオンラインの授業で対応せざるを得ない時期が何度かありました。大学としては、原則対面授業をすることを追求しましたが、それがかなわない時期があり、皆様には、ご苦労をかけしたと申し訳なく考えていますが、この間、先生方も精いっぱいの努力をされ、皆様の学びが深まる努力をしていただき、感謝申し上げる次第です。この間、世界では5億人近い人々が感染し、600万人を超える方々が亡くなり、日本では、600万人を超える感染者で、2.7万人を超える方々が亡くなりました。一昨日愛知県でもまん延防止措置は解除になりましたが、まだまだ油断はできません。若い方でも重症化したり死亡したりすることもあることを念頭に、日ごろからの感染防止は、社会に出ても続けるようにしてください。

 大学生の4年間は、今人生100年と言われますので、それから見れば、時間で言えば20数分の一に過ぎませんが、あとで振り返ると、きっと濃密な時間が流れていたと気づくことになると思います。同朋大学で、学科やクラス、あるいはクラブ活動を通しての友達ができたと思いますし、ゼミや学びを通しての師と呼べる先生との出会いがあったことを確信しています。生涯の友と言える友人関係を築くことのできるのが、この4年間であっただろうと、自らの経験を振り返りながらもそう思います。これから、皆さんは、社会人として旅立たれるわけで、その前途が、大いに輝くことを祈念しています。

 さて、一つの世界的課題は、ロシアのウクライナ侵略を止めさせることです。1か月前の2月24日にはロシアが隣国の独立国であるウクライナに国連憲章違反を承知の上で、武力侵略をし、そこに住む住民を殺戮し、幾多の建物やインフラを破壊し、国民と国土を蹂躙しました。これに対し、国連は、141か国の賛成でロシアを非難する決議を上げました。今は、21世紀ですが、爆撃され瓦礫と化したウクライナの都市の映像を見ると20世紀の二つの大戦時に、一瞬にして巻き戻されたような戦慄を多くの人が覚えたのではないでしょうか。私は、3月2日に、「ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、即時撤退を求める声明」を出しました。たくさんの大学の学長も同趣旨の声明を出されています。日本は、永遠に交戦権を否定し、紛争解決のために武力を使わないことを憲法で宣言した国です。皆さんの中には、それで国民や国を守れるのか、疑問だという人もいるでしょう。しかし、戦争になれば、罪なき人々が戦火に巻き込まれ亡くなります。それには、敵も味方もないのです。いつも犠牲になるのは、一般市民だということをわかってください。プーチンやその取り巻きたちは、戦争を命じるだけです。日本には、「自衛隊」があり、確かに戦闘をするための戦闘機や軍艦に相当するものや武器を備えて、日々訓練もしています。しかし、そうは言っても、77年の長きにわたって、自衛隊員は、他国の人を殺していません。それは、日本国憲法があったからです。「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」(憲法前文)し、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」(第九条)し、平和的手段こそが問題解決の唯一の道であると宣言しています」。そのことをよくよく心に刻んでほしいと願っています。心から、ロシアがウクライナから即時に撤退し、ウクライナに平和な人々の暮らしが戻ってくることを、皆さんと一緒に願いたいと思います。

 もう一つの大きな地球的課題は、主として二酸化炭素ですが、温室効果ガスの濃度が人間の生産・輸送などの諸活動により増加し、地球全体が温暖化しているという問題です。昨年と今年、数千人の世界中の科学者が参加するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は第6次報告書で、気温の上昇を1.5℃以内にとどめるための全地球規模での取り組みの必要性を訴えました。何とか気温上昇を抑えようと合意したのが2015年のパリ協定でしたが、国際的取り組みは思うように進まず、今後さらに異常な降水と干ばつが進み、食糧不足や洪水被害が顕著になると思われます。私たちは、今、地球全体の危機に直面しています。スウェーデンのグレタさん19歳の高校生の時のスウェーデン国会前一人座り込みから始まった若者による世界的ムーブメント「Fridays For Future未来のための金曜日」には、世界中で数百万の若者が参加し、日本でもFFFJapanの活動が話題を呼びました。このように、社会的問題に取り組み、仕組みを変えていくのは常に若い方々です。あなた方の、未来に大いに期待しています。

 皆さんは、同朋大学で、文学部では、仏教、歴史文化、日本文学、外国文学、映像文化を学び、それぞれの専門について研鑽を積まれ、社会福祉学部では、社会福祉や、心理学、経済行政、子ども学等についての専門的知識を身に着けられました。これから、大学院でさらに専門分野について研究を続ける人、社会に出て働く方々など多様な進路があると思いますが、この大学での学びは決して無駄ではありません。きっとあなた方の心の中に、一点の光として、明かりをともしてくれたことを信じています。「同朋和敬=共なるいのちを生きる=Living Together in Diversity」という同朋大学の建学の理念を胸に、皆さんの今後の活躍に期待し、卒業式にあたっての学長式辞といたします。