2022年度卒業式松田学長 

 2022年度卒業式式辞

 寒い冬も終わり、桜の開花も始まり、皆様の卒業をお祝いしています。卒業式もここ3年間は、屋外での挙行を迫られましたが、4年ぶりにこのホールで行うことができ、私自身も大変嬉しく思っています。まだコロナもあり、完全復活とはいかず、来賓の方々も同窓会会長佐藤賢秀様、共育後援会会長石川正明様が代表して出席いただいています。この席をお借りしお礼を申し上げます。
 先ほど学位記及び卒業証書をお渡しいたしましたが、今日めでたく卒業・修了される学部生273人、大学院修了生は博士課程1人、修士課程5人、別科24人の総勢303人の方々です。心からの祝福を申し上げます。
 さて、あなた方の多くが入学された年の晩秋11月に新型コロナ感染者が中国で発見され、その後数か月で瞬く間に世界中に拡がりました。世界全体で約7億人、日本では3,300万人が感染し7万人を超える方々が亡くなり、本学でも2021年度は前年度の10倍、2022年度は30倍と感染した学生さんも増えていますし、感染症の後遺症、ワクチンの副反応でつらい経験をされた方もいましたが、幸い重症者は一人も出ていません。この間、何回も対面授業とオンラインの授業を繰り返しながら、学業に支障ない形でやってきましたが、オンライン環境が十分でない方などもみえ、ご迷惑をおかけしたことに対してはお詫び申し上げます。当初は、学生の方、教員の方も不慣れで、特に教える側には戸惑いもありました。しかし、皆様のご協力の下、何とか苦難を乗り切れたのは、学生、職員、教員の努力の賜物と、皆様全員に感謝申し上げる次第です。この間ほぼ止まっていた様々な部活動も始まり、昨年秋には、3年ぶりに大学祭も中庭広場や成徳館の教室を使って開催でき、本当に嬉しく思いましたし、学生の皆さんの底力に感服した次第です。
 世界がパンデミック下にある中で、1年前の2022年2月24日には、ロシアが国際法を無視した形で、突如ウクライナに武力侵攻し、ウクライナの国を挙げての自国の防衛のための闘いは今も続いています。毎日、無辜のウクライナ市民がロシアのミサイル攻撃などで亡くなっているのを見ると、戦争の理不尽さを思わずにはいられません。20世紀の二つの世界大戦で、人類は二度と戦争を起こさないための方策として国際連合を作り、話し合いによる紛争解決を取り決め、国際連合憲章を作りましたが、そこでは戦争、侵攻、侵略のすべてを禁止しています。ロシアの侵攻後、何度も国連決議が多数の賛成で成立し、ロシアの侵攻を非難し、即時撤退を求めています。私は、こうした国連の努力を評価すると共に、ウクライナ国内からのロシアの即時撤退による停戦を強く求めたいと思います。武力による他国への侵攻は、いかなる理由があるにせよ許されることでないことを確認しなければなりません。日本は憲法九条で、「国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定め、曲がりなりにもこれを守ってきました。今月の13日に作家で1994年にノーベル文学賞を受賞された大江健三郎さんが88歳でお亡くなりになりました。大江さんは、2005年12月に「DOプラザ閲蔵」完成記念に来学され「共なるいのちを生きる」と題して講演されました。大江さんは自分自身の考え方の根底に日本国憲法があると発言し、憲法改正に反対する「九条の会」や、脱原発を訴えるデモの呼びかけ人として名を連ね、心には憲法と平和への熱い思いがありました。しかし、昨今の政府が進める防衛費の倍増や敵基地攻撃能力を持つことは、憲法九条違反と言えるし、あくまで周辺国との話し合いによる解決、即ち外交努力こそが最大の非戦の道ではないか。あなた方若人が、かつての日本のように戦争に行くことは、二度と繰り返してはいけません。
 さて、今年の2月にはトルコ・シリア大地震が起こり、5万人を超える人々が亡くなり、現地は今も震災被害に苦しんでいますし、12年前の3月11日は東日本大震災が襲い、2万人を超える方々がお亡くなりになり、福島第一原発の爆発で、放射能で汚染され、今もなお3万人を超える方々が、故郷に帰れず避難されています。そして、東南海地震は向こう30年のうちに、30~80%の確率で起きると予測され、死者は20万人を超えるとされています。にもかかわらず、日本政府は、原発回帰を今年に入り宣言しました。無謀というしかありません。これについても、私は、強く非難し、政策の撤回を求めます。気候危機を救う道は、自然・再生エネルギーの早急な拡大による脱炭素社会の実現しかありません。
 さて、本学は3年前に大学院を人間学研究科に一本化し、臨床心理分野の博士後期課程を新設し、3年後の今、初めて博士を修了された方が誕生しました。ご本人のご努力は勿論、ご指導いただいた先生方に学長として厚くお礼を申し上げます。さて、皆様の同朋大学での学生生活はいかがだったでしょうか?学生にあっては、あっという間の4年間ではなかったかと思いますが、このキャンパスで、恩師との出会い、多くの友達との出会いがあったと思います。私の経験からでも、大学時代の友人との関係は、場面場面であなた方の生きる力の糧となるのだと思います。一生の友人との出会いが、皆様が社会に出て働く中で、人生を豊かにしてくれることを願っています。あなた方一人ひとりが、「同朋和敬」を建学の理念とする同朋大学で学んだ人間力、「共なるいのちを生きる」を基礎に、自分の頭で考え、これからの社会のありようを自分たちで創る意気込みで、自信を持ってこれから生きていってほしいと願っています。そして、何か困難にぶち当たっても、それを自分一人で抱え込まないで、いつでも大学に戻ってきて相談してください。同朋大学の教員や職員の方々はいつになっても君たちを見守ってくれると確信しています。君たちが、宗教や民族や国境を越えて、世界中の同世代の若者と共に、一人ひとりが希望をもって平和の中に生きられる、そうした社会の一員として力強くあなた方の歴史を紡いでいただくことを心から願って、私の式辞といたします。皆さん今日は本当におめでとうございました。改めて保護者の皆様にも心からの祝福を申し上げます。

2023年3月23日

同朋大学学長 松田 正久