2023年度同朋大学入学式式辞

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 この晴れた日に、同朋大学にご入学された皆様、ただいま入学認定式を執り行い、文学部75人、社会福祉学部158人、3年次編入各学部2人ずつの4人、大学院博士前期課程11人、別科22人の総計270人の方々が、同朋大学に入学されました。ここ12階のホールで入学式を行うのは4年ぶり、この2年間はこの成徳館前の広場で行い、また4年生はコロナ禍にあり入学式が実施できませんでした。新型コロナ感染者も一時よりは下火になり、こうして入学式が執り行えることは、教職員一同至上の喜びと感じております。今年は例年になく桜の開花が早く、葉桜の芽生えの下での入学式になりましたが、同朋大学へのご入学、本当におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。紹介が遅れましたが、私は同朋大学学長の松田正久と申します。どうかよろしくお願いします。

 さて、入学された学部生の方々を分類しますと、大きく三つに分かれると思います。一つは,オープンキャンパスに参加して、本学が少人数教育を実践し、障がい者の方々に優しい大学、一人ひとりの学生の方々の顔が見える大学づくりを進めていることを評価していただき第一志望として本学に入学いただいた方、二つには、社会福祉士など福祉系の資格や教員あるいは学芸員など資格取得、あるいは強化クラブのスポーツに情熱をかけることを目指して入学された方、三つには、同朋大学をよくはわかっていないけれど、高校の先生などから勧められたから入学したという方、おそらくこの3パターンのどれかに皆様当てはまるのではないでしょうか。同朋大学は、いずれの動機に基づくご入学であれ、私たち教職員一同は、卒業まで責任をもって、皆様の教育に当たり、必ずや入ってよかった、この学部に進学してよかったと思っていただけるような教育を展開したいと考えています。また、スポーツを通した全人教育が目的ですので、勉学にも力を入れていただきます。

 今年度は大学院博士後期課程の入学者はゼロでしたが、仏教文化分野1人、臨床心理分野5人が博士号の学位を目指して研究に勤しんでいます。博士前期課程では仏教文化分野2人、臨床心理分野9人の進学者を迎えました。仏教文化分野では、真宗学を中心に学部の学びの成果をさらに深めることになるでしょう。また臨床心理分野9人の博士前期課程の皆さんは、まずは、臨床心理士と公認心理師の受験資格修得に向けて頑張っていただけるものと期待しております。別科は真宗大谷派教師課程の資格修得を目指される1年課程です。資格修得に向けて「共なるいのちを生き」ていただきたいと願っています。


 同朋大学は、真宗大谷派の仏教を礎とする大学で、大学の理念は「同朋和敬どうぼうわきょう=共なるいのちを生きる」です。真宗を開基したのが親鸞聖人で、今年はお生まれになってから850年と立教開宗800年をお祝いする慶賛法要が「人と生まれたことの意味をたずねていこう」をテーマに京都の東本願寺や名古屋の東別院をはじめ各地で営まれますし、大学でも関連記念行事を行います。真宗の教えは、平等の精神に基づき、夫々の人としての多様性を伸ばしあい、お互いにそのいいところを評価する、そして「共に育ち、ともに歩み、共に学ぶ」ことを実践していく大学です。皆様のいいところを更に伸ばせるように大学はお手伝いしたいと考えています。

 皆様は今日から「学生」であり「生徒」ではありません。法的には中学・高校までを中等教育と称し、そこで学ぶ方を「生徒」、中等教育を終えた教育機関を高等教育と呼び、そこで学ぶのを「学生」と呼びます。学生は、自主的に主体的に自らの意思で学ぶ人のことです。ですから、大学の授業は、自らの学びの意欲から主体的意思に基づいて探求する人々を称して「学生」と呼ぶのです。そのためには、常日頃から、「何故、どうして」と自らに問いかけることがとても重要です。というのも、我々は、かってなかったほどの混乱・混迷の時代に生きているからです。世界を見れば、この3年間パンデミックの中での生活を余儀なくされ、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻で、様相が全く変化し、今から78年前の1945年に発足した国際連合の機能回復が今ほど望まれている時はありませんでした。大国中心であったにせよ、様々な課題を話し合いで解決していく基盤を第二次世界大戦の反省の上に築いてきた枠組みが、壊れてしまいそうです。そして、2015年のパリ協定で確認された脱炭素に向けた取り決めの強化、あるいは2030年に向けたSDGsの目標達成が不安視される中、Carbon Neutralへの取り組みが停滞している中で、気候変動・地球温暖化が加速度的に進行していることです。日本では、少子化高齢化による人口の加速度的減少が進み、貧富の格差がこの30年で大きく広がりました。教育費の家計負担は、諸外国で最高水準で、修学支援金の拡大や奨学金の無利子化・給付化を進め、授業料の無料化も欧州並みに進める必要があります。ミサイルだ軍備だという前に、社会的基盤の整備にお金を使い、誰もが安心して学び過ごせる社会、若い方々が安心して子供を産み、育てられる社会、そうした社会の実現を心から望んでいます。これらの諸課題を考える際も「何故。どうして」を一つの心構えにして立ち向かうことが大事なことを訴えたいと思います。AIなどICTの進歩も目覚ましいものがありますが、先の見通しが予測できない激動の時代に私たちは生きています。いま述べた混乱の克服のためには、この激動の時代を切り拓く新しい発想や考え方が求められる時代になってきています。だからこそ、大学では、自分の頭で考え、しっかりと自分の意見を表明できる学生として成長してくれることを願っています。

 1年次では、基礎ゼミナールで、みんながいずれかのゼミに配属され、この担当の先生が皆様の相談にも快く応じてくれますし、大学には健康管理室や学生相談室、障害学生支援室もあります。これらはすべて成徳館の二階にありますので、遠慮なく相談してください。悩みを一人で抱え込まないでください。また学長室も同じフロアで、居るときはドアを開けていますので、軽い気持ちで是非訪ねてください。

 最後になりますが、これからの4年間、教職員一同、皆様とともにこのキャンパスで共に歩めることを望外の喜びとし、これからの教育に当たっていきます。そして、時には厳しく指導することもありますが、それも皆様に人間としての成長を願うからだと考えていただければありがたいと思います。大学での出会いを通して、生涯の友というべき関係を築いてください。
ご入学本当におめでとうございました。

2023年4月3日

同朋大学学長 松田 正久