いのちの村の理念

いのちの村理念について

 同朋大学は、「ともなるいのち」を生きている人と人が、互いに敬い、尊重しあうことのできる、人間関係、家庭、組織、そして社会を実現するために「いのちの村」を設置します。同朋大学は2001年6月13日、創立80周年、新制大学昇格50周年を記念して「いのちの村」を宣言しました。

 同朋大学の歴史がまさしく「いのちの村」であったことを自己確認すると同時に、新しい時代に相応しい「いのちの村」であり続けようとする決意の表明なのです。

 時代は複雑で巨大な組織へと発展し、高度な技術的リアリティの実現によって、虚像と実像の区別が危うくなっています。光学分野では古くから、写真などに写される対象となるものを「実像」(realimage)と呼び、何らかの光学的操作によって実像とそっくりに作られた「虚像」(virtualimage)を対立的に区別してきました。しかし、今日のデジタル社会では「虚」(virtual)は「現実」(reality)と結びついて「仮想現実」(virtualreality)と称されます。つまり、デジタル技術によって、「虚像」はすでに「実像」となんらかわらないものとして実現できるようになったという文化の自尊心がここにみえます。

 「バーチャル・リアリティ」という言葉は、「かつては自然界に存在しなかった仮想的な現実が、人間の技術的力量によって、もはや虚像ではなく実像といって差し支えない程に立派に実現したのだ」という意味を持っているのです。それはある種の発展でありましょう。井の中の蛙が、井戸に生活しながら海の匂いと波の音を知り、赤道直下の住民が、その場所にいながらにして雪の冷たさと白さを体験できるのです。

 しかし、こうした技術への驚嘆と畏敬とが、真相以上の評価を与えてしまい、実相を伴わない妄想が独り歩きしているように思えてなりません。つまり「それによってわたしは本当に幸福になれるのか」「すべてが仮想によって実現されることを、わたしたちのいのちは欲しているのか」といった、至極単純で当然の評価が正しくなされているだろうか、という疑問があるのです。

 そこで同朋大学は、今ここに生きている人間ひとりひとりの幸福に、現代という時代が、どれほどの価値を持って機能しているかを、個々の「いのち」に立ち返ってみる必要があると考えます。「個」と「いのち」が密接に、しかも「実像」として関係づけられていなくてはならないと思うのです。

 「いのち」は、「いのち」を育んでいるその人にとって、まさしく実像に他なりません。しかし、社会や全体は個々の「いのち」を数値や効率によって平均化して、組織構造に組み込んでいきます。組織的に理解された「生命(いのち)」は、もはや個々の実像であることを止め、全体の仮想として理解されるようになるのです。社会の効率化とっては、このような方法は必要なのかもしれません。

 しかし同朋大学はこうした考え方に追従しません。わたしたちは、福祉・仏教・文学を通じて、個々の「いのち」の実像に触れてきたと自負していますし、今後も触れ続けていきたいと願っています。

 仮想的に組織化された「いのち」の世界では、権力や能力、所有や名誉といった垂直的な価値が大きな意味を持ちます。わたしたちはそうした垂直構造によって、摩天楼のようにそびえ立つ空間イメージを「都市(まち)」と呼びます。
それに対して、同朋大学が宣言する「村」は、個々の「いのち」がその「いのち」の所有者一人ひとりに、実像として、誇りを持って実感され、その「いのち」を水平に向きあわせ、輝かせることのできる場所をイメージしています。つまり、何の飾りも権力もなく、ただ一人のはだかの人間として、ありのままの「いのち」に誇りをもって目覚め、すべての住民が対等に向き合い、互いの存在を尊重しあえる場所こそ「いのちの村」だと考えるのです。

 同朋大学が求めているのは、実像として肌身に感じて向き合えるアクチュアル(ACTUAL)なリアリティですが、ITの発達によってもたらされた、バーチャルなリアリティを排除するものではありません。時間や空間を超えて、かつては出会うことのできなかった、人間が水平に向き合える場としてのネットワークは有効に利用されるべきです。しかし、「個」と「いのち」とが「実像」として関係づけられるべきであるという理想を失うことだけはあってはならないという意味で、無頓着な時代追従型の考え方には批判的にならざるを得ないのです。

 同朋大学の「いのちの村」は、名古屋市中村区というローカルなエリアに存在して、地域との連携を深めていきます。同時に「村」としての理念がネットワークによって、グローバルに展開され、実現されていくならば、それは時代がもたらした偉大な恩恵として受け止めていきたいと思います。

グローバルでありながら、仮想的な垂直構造にとらわれない個々に自由な「村社会」、それこそが新しい人間の居住区となるべきではないでしょうか。いま同朋大学は過去から未来へ向かい。わたしたちのアイデンティティを確認し、時代に即応する解釈を見据えていきたいと考えています。

 同朋大学「いのちの村」宣言は、こうしたわたしたちの強い意志を示しているのです。

いのちの村の活動

皆さまも “いのちの村” 活動にアイデアや感想をお寄せください

  • 私なら、こんな“いのちの村”活動を展開したいというアイデア、情報。
  • “いのちの村”全体についての感想、“いのちの村”理念に対する感想。

Eメール (このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。) までお寄せ下さい。

お問い合わせ先

〒453-8540
名古屋市中村区稲葉地町7-1

TEL:052-411-1131(直通) FAX:052-411-0333

Eメール:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。