2022年3月2日        

同朋大学学長 松田 正久

 

  ロシアのプーチン大統領は、2月24日ロシア軍をウクライナに侵攻させました。これは、「国際の平和及び安全を維持すること」を目的とした国連憲章の精神を踏みにじるものであり、決して許されることではありません。プーチン大統領は、核兵器使用をほのめかし威嚇するなど、軍事行動を一層強化・継続しています。今世紀最大の平和の危機であると言って過言ではありません。

 同朋大学の建学の精神は、「同朋和敬=共なるいのちを生きる」です。すべての人が平和な中で生きていくことが願われています。仏教は、経典に「兵戈無用」(『仏説大無量寿経』)と示し、平和的手段こそがあらゆる事態を解決する唯一の方法であると述べています。ブッダは説かれました、「生きとし生けるものは暴力に怯え 生きとし生けるものは死を恐れる。自分自身もそうであることを自覚し、殺してはならず、殺させてはならない」(『ダンマ・パダ』)。ロシア軍の攻撃の中、地下鉄駅舎などに肩を寄せ合い避難しているウクライナの市民の姿、罪なき子どもたちを含めた多くの人が言われなき暴力に曝されている姿を目にするとき、わたしはブッダがまさに今のわたしたちに語りかけていることを感じます。殺させてなりません。

 日本に立ち返れば、第二次世界大戦での我が国の侵略行為を反省し、戦争を二度と繰り返してはならないと誓い、日本国憲法を定めました。わたしたちは、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」(憲法前文)し、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」(第九条)し、平和的手段こそが問題解決の唯一の道であると宣言するものです。

 大学は、学術研究を通して、世界の平和の実現と学生諸君の人格の形成・人間の尊厳の確立を目的とする高等教育機関であり、この目的からも、武力による他国の侵略などは到底許されるものではないと考えます。

 ロシア国内においても弾圧・抑圧に屈することなく反戦を訴える市民がいて、その中には多くの大学人・科学者・研究者たちがいると確信します。わたしは一人の大学人として、平和を求める全世界の市民・大学人と連帯し、プーチン大統領とロシア政府に対して、即刻ウクライナから撤退することを、強く求めます。

 あわせて、学生、教職員の皆さんが、今起きている事態をどう考えるのか、自らの問題として、考え、話し合っていただくことを期待し、この学長声明を出すことにしました。一緒に考えていきましょう。